2022.03.03
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が体にあらわれ、良くなったり悪くなったりする病気のことです。
皮膚のバリア機能が弱い方や、アレルギーになりやすい体質の方によく見られる皮膚の炎症として知られています。
厚生労働省が2017年に実施した調査では、アトピー性皮膚炎の総患者数は約51万3,000人と推計されています。
多くの方が悩まれている病気のひとつがアトピー性皮膚炎なのです。
本記事では、アトピー性皮膚炎の遺伝的な要因や後天的な原因、有効的な治療法について解説しています。
「生まれてくる子どもがアトピー性皮膚炎にならないか心配」「アトピー性皮膚炎を改善する方法はないか」と悩まれている方はご一読ください。
アトピー性皮膚炎は、世界的に見ても発症する頻度が高いアレルギー性疾患です。
まずは、アトピー性皮膚炎の遺伝的な原因について、どのようなものがあるのかを詳しく見ていきましょう。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー諸疾患は、アトピー素因(そいん)の遺伝をもつ人にのみ発症するといわれています。
アトピー素因を持つ人は、アレルゲンに反応を示し、アトピー性皮膚炎などのアレルギー諸疾患になりやすくなります。
アトピー素因は体質のひとつとして高い遺伝率があることから、血縁家族にアレルギー性疾患があるかどうかは重要なポイントです。
また、アトピー素因と一言でいっても、発症する場所によって異なる病気となります。
たとえば、気管支の粘膜に発症すると気管支喘息(きかんしぜんそく)に、鼻の粘膜に発症するとアレルギー性鼻炎(びえん)や季節性鼻炎といった病気になります。
今回ご紹介するアトピー性皮膚炎は、皮膚にアレルギー反応が発症したために起こった病気なのです。
IgE抗体とは、アトピー性皮膚炎によるかゆみ、喘息発作などを起こす物質です。
アレルギー性疾患は、Ⅰ型(アナフィラキシー型反応)、Ⅱ型(細胞傷害型反応)、Ⅲ型(免疫複合体型反応)、Ⅳ型(細胞免疫型反応)の4種類にわけられます。
とくに、Ⅰ型アレルギーは、IgE依存型とも呼ばれ、IgE抗体が大きく影響するアレルギー反応です。
血液中に含まれるIgE抗体が高ければ高いほど、アトピー性皮膚炎にかかりやすく、重症になりやすいとされています。
免疫は、ウィルスや細菌から体を守るように機能しており、体をととのえてくれるシステムです。
この免疫に異常が起きると、体に不調があらわれる、病気になるといったさまざまな問題を引き起こす恐れがあります。
免疫機能に異常が起こると、体にとって無害な物質であるにもかかわらず、免疫が過剰に反応し、自分自身の体を傷つけてしまうことがあるのです。
免疫異常を起こしやすい体質は、アトピー性皮膚炎の遺伝的な原因のひとつとしても挙げられます。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー諸疾患の原因として、まずアトピー素因によるものが挙げられます。
遺伝子にアトピー素因が組み込まれている体質を受け継いだ場合に、選択的にアトピー性皮膚炎にかかる可能性があることは否定できません。
ただ、アトピー性皮膚炎は、先天的な要因が確かにありますが、さまざまな調査研究により、遺伝だけでアレルギーになるとは限らないことが報告されています。
たとえば、自身がアトピー性皮膚炎ではなくても、遺伝子のなかにアトピー素因があれば、自身の子どもや孫がアトピー性皮膚炎になることもあります。
反対に、自身がアトピー性皮膚炎だとしても、必ずしも子どもや孫に遺伝するとは言い切れないのです。
つまり、アトピー性皮膚炎になる可能性があるだけで、必ずなるわけではありません。
では、遺伝的な要因をもつ場合、どのようにアトピー性皮膚炎を予防・対策すべきなのでしょうか。
ここからは、具体的な対策方法についてまとめています。
アトピーの体質そのものを変えることはできません。
体質というものは、細胞内にある核のなかに存在する染色体の、さらになかにある遺伝子に組み込まれたものです。
化学物質によってつくられた信号のことで、ゲノムとも呼ばれています。
アトピー素因は、体に組み込まれた遺伝子に含まれており、遺伝子は細胞が分裂していくごとにコピーされて、代々受け継がれていくのです。
そのため、体質自体を変えることはできないといわれています。
アトピー性皮膚炎の治療法として有効的なのは、体質を変えるのではなく、生活習慣を変えることです。
予防として保湿剤を塗ることが大事だと証明した、ある実験があります。
生まれてから1週間経たない赤ちゃんのTEWLを測定することで、その後にアトピー性皮膚炎との関係性について調査したというものです。
TEWL(Transepidermal Water Loss)とは、経表皮水分蒸散量(けいひょうひすいぶんじょうさんりょう)のことで、体から無自覚のうちに皮膚表面を通って蒸発して広がっていく水分量のことです。
運動や体温上昇によって汗腺(かんせん)から分泌される汗とは異なり、正常な状態でも、わずかな量の経表皮水分蒸散があります。
TEWLは、皮膚の重要な機能のひとつである、バリア機能がどれほどかをあらわす指標にもなっています。
つまり、TEWLの値が高い(=無自覚に皮膚から蒸発する水分量が多い)と皮膚のバリア機能が低く、反対にTEWLの値が低いと皮膚のバリア機能が高いといえるのです。
研究では、赤ちゃんの額のTEWLが高いほど、アトピー性皮膚炎になる可能性が高いことがわかりました。
そして、TEWLの値が高い赤ちゃんでも、毎日、保湿剤を塗ることで、TEWLの値が低い赤ちゃんとアトピー性皮膚炎になる可能性が変わらないことが、調査結果からわかったのです。
つまり、遺伝的に皮膚が乾燥しやすい体質というのはありますが、皮膚のバリア機能は保湿剤を塗ることで、カバーできることが証明されたのです。
アトピー性皮膚炎の遺伝的な要因と、対処法をご紹介してきましたが、ここからは、アトピー性皮膚炎の要因のうち遺伝的なものではなく、生まれたあとの後天的な要因についてどのようなものがあるのかを見ていきたいと思います。
アトピー性皮膚炎を発症する後天的な要因には、「外的刺激」である以下の原因が考えられます。
あわせて原因ごとの解決策も見ていきましょう。
地球上には4万種類におよぶダニが生息しています。
そのなかで、アレルゲンとなるのは、「コナヒョウヒダニ」や「ヤケヒョウヒダニ」などです。
種類によって食品や寝床、動物の毛などに付着しており、ダニをすべて取りきることはむずかしいともいわれています。
対策としては、シーツやカバーを定期的に洗濯したり、日光に当てて干したりが挙げられます
ハウスダストは、家のなかに舞うホコリやチリのなかでも、1mm以下の目に見えにくいもののことです。
ダニの死骸やフン、カビ、繊維クズ、人の体から落ちたフケ、ペットの毛などさまざまなものが含まれています。
ハウスダストは非常に小さいことから、吸いこみやすいため、こまめな換気が有効です。
花粉が皮膚に触れたことで、アトピー性皮膚炎になり、赤みのある湿疹があらわるケースもあります。
鼻や眼などから花粉が入ることで、体が異物と判断して抗体をつくります。
アレルギー反応を起こすことで、花粉を体の外へ排出しようとするのです。
花粉飛散予報などを活用して、特に花粉が多い日は不急の外出を控えたり、外出する際には花粉がつかないように、メガネやマスクを着用したり、帰宅時に玄関の前で衣類についた花粉を払い落としたりしましょう。
アトピー性皮膚炎の初期症状として、皮膚の乾燥がよく見られます。
ザラザラとした鳥肌のようになるのが特徴的です。
乾燥することでバリア機能の低下を招いたり、かゆみがあるために、かきむしることでバリア機能を壊したりしてしまうケースもあります。
とくに、入浴後は乾燥しやすいため、保湿剤を塗ることが大切です。
以上が、遺伝的なアトピー素因以外でアトピー性皮膚炎になる原因の一例となります。
アトピー性皮膚炎になる原因として、先天的なものである「アトピー素因」と「バリア機能の低さ」、後天的なものとして「外的刺激」を挙げてきました。
この3つのうち、どれか1つでも取りのぞくことで、アトピー性皮膚炎の症状を和らげることにつながるとされています。
ただ、前述したように先天的なものである「アトピー素因」を変えることはできません。
また、「外的刺激」をまったくのゼロにすることもむずかしいでしょう。
しかしながら、「バリア機能」については、適切なスキンケアを行うことで、改善が期待できるのです。
アトピー性皮膚炎の遺伝的な要因や、後天的な要因、有効な対策についてご紹介させていただきました。
アトピー性皮膚炎は様々な要因が重なって発症する疾患です。中でも遺伝的な要因、体質的な要因は変えることが難しいですが、適切な対策や予防・治療方法によって症状をコントロールすることができる疾患です。
日常生活の中で一つ一つ対策を意識することは大変ですが、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。
ライスパワー研究所では、このほかにもアトピー性皮膚炎のスキンケアに参考となる情報を発信していますので、ご覧いただけますと幸いです。